親友を亡くした男のこと

読経の時は目を閉じていて、いや、開けたのか開けていなかったかさだかでないが、彼はたしかに親友の姿を見た。白装束に白足袋で、岩山を登って親友は、彼を見てにっこり大きく口を開けて笑い、手を大きく振っていた。信じてもらえないと思って黙っていた。あとで妻にだけ話した。妻はそれを娘にだけ話した。